第16話:安心できる場所が少しずつ増えていったこと
前回のおさらい:また誰かと関わってみたいと思えた日
前回(第15話)では、「また誰かと関わってみたい」と感じられたきっかけについて綴りました。
うつ状態の中で、閉ざしていた心がほんの少しずつ外に向けて開きはじめた日々。
関わることが怖い、でも、少しだけ話してみたい——
そんな矛盾する気持ちを抱えながらも、人とのつながりを求める気持ちが芽生えた日々でした。
今回はそこからさらに一歩進み、「安心できる場所が少しずつ増えていったこと」について、丁寧に振り返っていきます。
最初は、安心できる「人」だった
誰かと話すこと自体が怖かった時期を過ぎて、気づけば「この人なら話せる」と思える人が増えていました。
それは、家族だったり、昔の友人だったり、たまたま話しかけてくれたバイト先の人だったり。
深く話さなくてもいい。ただ、その人がそこにいてくれるだけで「大丈夫かもしれない」と思える——
そんな存在が少しずつ、心の中に根を張っていくような感覚でした。
場所に感じた、初めての「安心感」
人の次に、「場所」にも安心を感じるようになったのは、もっと後のことでした。
混雑した電車や、大きなショッピングモールのような場所は、今でもちょっと苦手です。
でも、静かなカフェや、図書館、馴染みのある道を歩くときに、「ここなら落ち着ける」と思える瞬間が増えていきました。
何も特別なことがなくても、自分のペースでいられる場所。
そこにいると、呼吸が深くなる気がしました。
安心の輪郭が、だんだんとはっきりしてきた
「安心できる場所」があるということは、自分にとって本当に大きな支えでした。
うつの真っ只中では、どこにいても不安で、誰といても気を張っていて、「安心」という言葉から最も遠いところにいたように思います。
でも今は、ふとした瞬間に「あ、ここは安心できるな」と感じられる場所が、少しずつ思い浮かぶようになりました。
そしてその場所に、また行きたいと思えること。
それ自体が、自分にとって希望でした。
最後に:もしあなたにも、そんな場所があったなら
「ここなら大丈夫」と思える場所や人が、ひとつでもあること。
それは、決して当たり前じゃなくて、とても大切なことなんだと思います。
そして、今はまだそんな場所が見つからなくても、
ゆっくりでも、きっといつか見つけられると信じています。
次回予告
次回、第17話では、
「自分を責める日が少しずつ減っていったこと」
について綴っていきます。
「自分なんて…」と思っていた頃を思い出しながら、
その感情がどう変化していったのかを振り返っていきます。