第17話:自分を責める日が少しずつ減っていったこと
~「自分なんて」と思わない日が増えていった道のり~
前回は、安心できる場所が少しずつ増えていったことについて綴りました。
誰かと一緒にいても「怖い」と思わなくなったあの日、
私の中で「ひとりじゃない」という感覚が芽生えた気がしました。
それでも、「安心できる場所が増えること」と「自分を責めないこと」は、
まったく別のハードルだと感じていました。
周りに優しい人がいても、居場所があっても、
「自分で自分を許せない」感覚だけは、なかなか消えなかったんです。
◆ 「自分なんて…」が口癖だったあの頃
うつの症状がひどかった時期、
私は毎日、心の中で同じ言葉を繰り返していました。
「自分なんて、生きてる価値ない」
「どうせ何もできない」
「また今日も何もしなかった」
朝起きるだけで精一杯で、
食事も喉を通らなくて、
洗顔も歯磨きもできずに一日が終わる日もありました。
そんな自分に、「本当にダメだな」「最低だな」と何度も何度も言い聞かせていました。
何もできない自分が恥ずかしくて、
人に会うことも、声を聞くことも怖くて。
スマホに来たメッセージを見ても、返せなくて、
「返せない自分」をまた責めていました。
◆ 友達の言葉に救われた日
そんなある日、久しぶりに連絡をくれた友達に、
「ごめん、最近全然何もできないんだ」と打ち明けたことがありました。
そのとき、友達はこう言ってくれました。
「それでも連絡くれたじゃん。偉いよ」
「生きてるだけですごいよ」
その言葉を聞いて、私は涙が止まらなくなりました。
今まで「できない自分」しか見えていなかった私にとって、
「できていること」を肯定してもらえたのは、初めての経験でした。
「こんな私でも、少しは頑張れてたのかな」
そんなふうに、ほんの少しだけ心が軽くなった瞬間でした。
◆ 小さな“できた”を見つける日々
それから私は、意識的に「今日できたこと」を探すようになりました。
「今日はカーテンを開けられた」
「今日はシャワーを浴びられた」
「今日は1分だけでも外に出られた」
それは本当に小さな、小さなことでした。
でも、そういう「できた」を見つけた日は、
心の中で少しだけ誇らしい気持ちになれたんです。
もちろん、すぐに「自分なんて」と思わなくなるわけじゃありませんでした。
「またできなかった」「昨日はできたのに」と責めてしまう日も何度もありました。
それでも、少しずつ、「責める言葉」を打ち消す小さな“できた”が積み重なっていきました。
◆ ある朝、ふと思ったこと
ある朝、鏡の前に立ったとき、
ふと自分の顔をじっと見つめていました。
「前より、少し元気そうかも」
そんな言葉が心の中に浮かびました。
今までは、鏡を見るたびに「疲れた顔」「情けない自分」ばかり目についていたのに、
その日は「少し笑える自分」に気づけたんです。
「昨日より、ちょっとだけいい顔してるかも」
その小さな変化に、自分でも驚きました。
◆ 「責める日」が減ったから、明日が怖くなくなった
自分を責める日が少しずつ減っていったことで、
「また明日が来ること」が、少しだけ怖くなくなりました。
「明日も自分を責め続けるんじゃないか」
「どうせまた落ち込むんじゃないか」
そんな不安が、少しずつ薄れていったんです。
もちろん、今でも責めてしまうことはあります。
でも、「責める回数が減った」というだけで、
私の中では大きな前進でした。
「自分を責めない自分」を、少しずつ、育てられるんだ。
「責める日が少なくなる」というのも、一つの回復なんだ。
今は、そんなふうに感じています。
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【次回予告】
「誰かに自分のことを話してみたいと思えた日」