第14話:生きていてよかったと思えた瞬間
前回のおさらい
前回(第13話)では、
「未来を想像するのが怖くなくなったこと」について綴りました。
うつのなかで「未来」は不安や絶望の象徴でした。
でも、「明日コーヒーを飲もう」「来週カーテンを洗おう」——
そんな小さな想像が、未来に優しさを感じさせてくれました。
今回は、その先の話です。
「生きていてよかった」と思えた、ほんの一瞬の出来事について書いていきます。
うつのなかで生きる意味を見失っていた日々
私にとって「生きてる意味」なんて、わからなくなっていました。
布団から出るだけで苦しくて、
鏡に映る自分にイライラして、
他人のSNSを見ては「なんで自分はこうなんだ」と落ち込んで。
そんな毎日を繰り返すうちに、
私は「感じる」ことそのものを手放していたのかもしれません。
「生きているって、なに?」
その答えなんて、見つけられる気がしませんでした。
いつもの夕焼けがくれた、かけがえのない感情
ある日の夕方、帰り道にふと一駅分歩いてみようと思ったんです。
季節は秋。
空は高くて、オレンジと青が混ざるような優しい色をしていて、
公園のベンチに座って深呼吸をしたとき——
風が心地よくて、
遠くから子どもの笑い声が聞こえて、
街路樹の影がゆっくり揺れていて。
そのとき私は、
**「なんか…いいな」**って、心の中で自然につぶやいていました。
理由なんてないけど、
生きていてよかったって、初めて心の底から思えた瞬間でした。
生きる理由は、誰かと比べて見つけるものじゃない
それは特別な日じゃなかった。
記念日でもなく、旅行でもなく、ただの「平日の夕方」。
でもその中に、確かに「生きている感覚」がありました。
成功してる人みたいに輝けなくても、
「すごい人生」じゃなくてもいい。
私にとっての「生きていてよかった」は、
静かに、穏やかに、感情が少しだけ動いたときに訪れました。
また心が沈む日もある。でも、感情は戻ってくる
この瞬間があったからといって、
全部がうまくいくようになるわけじゃありません。
また、何も感じられない朝が来るかもしれないし、
また、自分を責める日もあるでしょう。
でも私は知っています。
この感情は、一度消えても、
ちゃんと、また戻ってくるということを。
うつからの回復は「生きていてよかった」を感じる力の回復
うつ状態から少しずつ回復するなかで、
「生きることって悪くない」と思える日があること。
それは回復の一歩であり、
とても大切な「心のサイン」だと、今なら思います。
たとえ今日がしんどくても、
その日が、きっとまた来ると信じていてください。
次回予告
次回、第15話では、
**「また誰かと関わってみたいと思えた日」**について綴っていきます。
人と距離を置くようになっていた私が、
再び「誰かと話してみたい」と感じた瞬間を振り返ります。