第11話:うつで人と話すのが怖かった私が、少しずつ変われた話
前回のおさらい
前回(第10話)では、「小さな喜びを感じられる日が増えたこと」についてお話ししました。
何も感じられなかった世界の中に、
ほんの少しの「うれしい」「楽しい」という気持ちが戻ってきたことは、
回復への大切なサインでした。
今回は、さらにもう一歩。
**「人と話すことが怖くなくなったこと」**について綴っていきます。
うつで人と話すのが怖かった日々
うつ状態のとき、
私は**「人と話すのが怖い」**という気持ちにずっと苦しめられていました。
- 何を話せばいいかわからない
- 変に思われたらどうしよう
- 自分のダメな部分がバレるのが怖い
そんな恐怖心が常に頭の中を支配していて、
誰かに話しかけられるだけで、心臓がバクバクする。
人と目を合わせるのも怖くて、下を向いてばかりいました。
特に、何気ない雑談が苦痛でした。
みんな楽しそうに会話している中で、
自分だけが世界に置いていかれているような孤独感。
「どうせ自分なんか、必要とされていないんだろうな」
そんな思いが心の奥底に根を張って、
さらに人を避ける悪循環に陥っていました。
少しずつ、「人と話す怖さ」がやわらいだきっかけ
転機は、本当に些細なことでした。
ある日、コンビニの店員さんに
「ありがとうございます」と言われたとき、
ふと、胸の中に小さな温かさが灯った気がしたんです。
「ああ、誰かと交わす言葉って、こんなにもあたたかいんだな。」
それは特別な会話でも、深い話でもありませんでした。
でも、その一言が、
人と話すことへの恐怖心に、ほんの小さなひびを入れてくれた気がしました。
そこから私は、意識して「小さな会話」を積み重ねる練習を始めました。
- スーパーのレジで「お願いします」と伝える
- カフェで「ごちそうさまでした」と言ってみる
- すれ違った近所のおばあちゃんに軽く会釈する
最初は緊張で手が震えることもあったけど、
それでも「話しかけても世界は壊れなかった」という成功体験が、
少しずつ怖さを溶かしていってくれました。
うつからの回復と「人間関係のリハビリ」
うつの回復過程で、
人間関係も「リハビリ」が必要だったと、今は思います。
- いきなり深い話をしなくていい
- 無理に話題を作らなくていい
- ただ「こんにちは」と言うだけでもいい
そんなふうにハードルを下げていったことで、
私は少しずつ、人と関わることへの恐怖心を手放していきました。
そしてなにより、
「誰とでもうまく話さなきゃいけないわけじゃない」
「苦手な人がいても、別にいいんだ」
そう思えるようになったことで、
心がずっと楽になったのです。
人と話すことが怖くなくなった今、思うこと
今でも、大勢の人と話すのはあまり得意ではありません。
初対面の場では緊張することもあります。
でも、それでいい。
完璧じゃなくていい。
うまく話せない日があってもいい。
うつで「人と話すのが怖い」と感じていた過去の自分に、
今の私はこう伝えたいです。
「大丈夫。少しずつ、できるようになるから。」
「たった一言でも、あなたは世界とつながっている。」
人と話すことの温かさを、
もう一度感じられるようになった今、
私は確かに、生きる世界を取り戻しつつあります。
次回予告
第12話:「無理して笑わなくなったこと」
ずっと「笑わなきゃ」「明るくしなきゃ」と自分を追い詰めていた日々。
でも、無理に笑わず、素直な自分でいられる時間が増えた経験について、
次回は綴っていきます。